キャンプ場の特徴および魅力の創出に関する調査報告

陳盛雄
キャンプ場部会
中華民国露営協会

序文

一人当たり所得が増加した結果、自然、キャンプ、これら健康的な屋外活動のために屋外に出掛けたいという気持ちが非常に高まっています。キャンプスタイルは、車の普及や休日の増加により、以前の教育的キャンプから家族キャンプに変わりました。日本政府および台湾政府、それに民間人や企業がキャンプ場の開発に投資するようになりました。

キャンプ場のシステム、装置および設計、キャンプ活動の段階についての研究調査はありますが、キャンプ場の自然環境に対するキャンパーの嗜好については調査は不足しています。本調査が日本、台湾、欧州諸国のキャンパーの自然なキャンプ場環境に対する嗜好についての意見をいくらかでも解明し、新キャンプ場開発の将来の参考のためにその違いを研究できればと願っています。

アンケートの内容

アンケートは５ぺージ構成になっています。第１ページは回答者の基本データを扱っています。第２ページはキャンプ場の周囲環境についての嗜好が対象です。第３ページはキャンプ場の入口に関する調査（嗜好および環境に対する影響）です。第４ページはキャンプ場内の道路状態に関する調査（嗜好および環境への影響）です。第５ページはピッチに関する調査（嗜好および環境への影響）です。

面接およびアンケートの回収

３０００枚のアンケート用紙を印刷し、９種類の回答者、すなわち小学生、中学生、大学生、キャンプ場設計者、キャンプ監督、キャンプ場管理者、成人キャンパーを対象としました。回収した有効回答数は日本から１８８５部、台湾が９０５部、欧州が１０７部でした。（注：本報告では、紙面の都合により、無作為に抽出した有効アンケート３８０部と２ページの内容のみを扱います）。

写真の選択

キャンプ場の周囲環境はいろいろな種類があります。写真は以下に掲げるタイプから選びました。

（１）渓流型（写真１、台湾）
（２）湖畔型（写真２、フィンランド）
（３）海浜型（写真３、日本）
（４）河川型（写真４、ドイツ）
（５）森林型（写真５、日本）
（６）都市型（写真６、ベルギー）
（７）牧場型（写真７、イングランド）
（８）山岳型（写真８、台湾）
（９）農園型（写真９、イングランド）

調査統計

調査は１９９６年３月から１０月にかけて実施されました。２７０８部のアンケートが配布され、そのうち２３７４部が回収されました。分類および分析を行った後、キャンパーのキャンプ場環境に対する嗜好の平均値は下記の通りとなりました。

よりよく理解するために、表を嗜好の順位に従って整理しました。

嗜好順位

地域	有効回答数	写真番号
		1	2	3	4	5	6	7	8	9
台湾	115	2	1	5	3	4	9	7	8	6
日本	158	2	1	5	9	7	4	3	8	6
欧州	107	2	1	3	7	5	9	4	8	6

　

結果の分析および検討

１）上の表から回答者の国籍に関係なく、湖畔型キャンプ場、それに次いで渓流型キャンプ場がもっとも好まれていることが容易に分かります。一方最も人気のないのは都市型、次いで山岳型です。

２）欧州では、観光客が便利な滞在場所を確保できるように、主要都市には必ず２、３の都市型キャンプ場があります。そのような施設が日本や台湾では少ないことは、よく理解できます。今回の調査で欧州の人々が都市型キャンプ場を選択しなかった理由は、写真の背景にビルがあるためだと思われます。これは自然へのあこがれに反しているからです。日本や台湾は、この結果を将来の参考にすることができるでしょう。

３）日本や台湾のキャンパーはいずれも森林型キャンプ場を第３位に挙げています。しかし、欧州のキャンパーにとっては第５位です。たぶんこれは文化の違いでしょう。日　　本人や台湾人はその教育的キャンプ期において、深い森林でのキャンプを奨励しています。多くのキャンプの歌もそのような考えを示しています。また東洋人は欧州人のように「日光浴」をするより木陰に隠れることの方を好みます。海浜型キャンプ場が欧州のキャンパーにとって第３位で、日本のキャンパーにとっては７位であるのはそのためかもしれません。

４）欧州のキャンパーにとって牧場型キャンプ場は第４位にランクされていますが、台湾のキャンパーの場合は第７位です。たぶんこれは台湾にある１３９個所の有名なキャンプ場のうち牧場型キャンプ場はたった１個所しかないためでしょう。写真には馬が大写しになっているので大変疎遠な感じがします。

要約

全体として、嗜好の第３位まではすべて水および／あるいは森林資源に関係しています。これは屋外に行く場合の人々の自然に対する好みを表しています。さらに、水資源はレジャースポーツ活動も提供します。
　最も好まれなかったのは人工的な建造物のある場所や混雑した場所です（例えば、写真８の山岳型キャンプ場が選ばれなかった理由は、キャンプ場のやや込み合った様子のためであり、山型そのものではないと思われます）。

注：本報告の原本は総ページ数が８４ページに上り、１９９７年１１月１６日に東京農業大学で開催された日本レクリエーション学会第２７回全国大会において発表されました。